春ごろに書いた詩の一部

【ある春の夜に】

 

夜の暗闇がごうごうと唸っている。

あまりにも多くを語りかける饒舌な春の月は、おだやかな水面に、その姿を投げ入れる…

 

夜に沈んだ池と

遥か雲海のかなたから覗くおぼろ月

近くて遠い二人の会話は、夜が明けるまで続くのだろうか

 

大地の輝きと

かぐわしい春の陽気に

うるわしい樹々の木洩れ日に

 

季節はなにをささやくのだろう

通り過ぎていったあなたとの記憶も

そよ風がさらってしまうのだろうか

 

草原をかける時の駿馬は、あなたを乗せて、わたしのもとを去ってしまったというのに…

 

ああ、ただ色褪せぬ思い出の中で

あなたはわたしに、今も微笑む